感染後数か月の息切れは気道免疫細胞の異常な制御が原因?

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いったんコロナから回復しても数か月、1年単位で息切れや疲労感、記憶力の低下といった症状が持続するってのは多く報告されている話。いわゆる”Long-Covid”ってやつですね。最初の退院後50%以上の人がLong Covidを経験するなんて報告もあって、分子・細胞レベルでの解明が急がれるところです。

そこで新たに出た研究(R)では、回復後の呼吸病理と免疫システムとの関係を探ってくれてていい感じでした。

ここでは、過去に重症のCovid-19で入院し、さらに感染後3~6か月経過時点で呼吸に慢性的な異常を示す38人を対象に、気道および末梢血の免疫細胞およびプロテオーム組成解析なんかを行ってます。これまでの研究では血液中のマーカーが主な研究対象として使われてたんですけど、今回は肺での免疫細胞の活性を直接調べてくれてるところがうれしいポイントっすね。

で、基礎疾患がなく、Covid-19にも感染していないボランティア29人と比較した結果、以下のようなことがわかりました。

  • 慢性的な異常を抱えている人は、健康な人と比較して、気道中で活性化CD8+およびCD4+Trmが大幅に増加しており、さらに単球プールにも変化が見られた
  • 気道のプロテオームも健康な人とは異なっており、細胞死、バリアの喪失、免疫細胞の動員などに関連するタンパク質(EGFR、KRT19など)が増加していた(これは活性化した組織常在性のCD8 Trmの数の増加と相関)。プロテオームの異常は、最初の感染時の異常と同様のものもあれば特異的なものもあった
  • B細胞の頻度は、肺の異常が広範囲に及んでいる人、ガス交換量の低下が顕著な人ほど大きく、B細胞は気道において組織損傷を直接的に促進している可能性が示唆された
  • しかし、これらの気道における異常は、末梢血のプロテオームや免疫細胞からは確認されなかった。また、健康な人との違いの程度は、初期の重症度とは関係がなかった(ある患者さんはCXCR3ケモカインの上昇に応じてT細胞反応が高まり上皮障害と細胞外マトリックス調節異常が見られたが、別の患者さんではもとの状態に戻っていた)
  • また、17人のグループには1年後、再診断を受けてもらったところ、14人は症状が改善し、CTスキャン上での肺の異常も少なくなっていた。他の3人は、CTスキャンではまだ肺の異常が見られたが、気道中の免疫細胞の数は大幅に減少していた

といった感じ。ざっくりまとめてしまえば、

  • Covid-19感染後長期的に息切れが続いている人では、気道の炎症と傷害につながる免疫反応をオフにできないことが原因で生じてるのかも
  • ウイルスと戦うために血液中、肺を含めあらゆるところで炎症の兆候が高まるんだけど、3~6か月位だと血液中ではその上昇が収まるのに対して、肺ではまだ時間がかかるのかも

って事っすね。

これまでは、回復期におけるサンプルの少なさゆえに、ヒト呼吸器のウイルス関連の病理におけるCD8 Trmの長期的な役割はほとんどわかっていなかったんですけど、

  • 急性疾患から回復したのち、長期間にわたる気道におけるCD8 Trmの活性化が、呼吸器上皮への継続的な損傷を引き起こし、気道疾患を引き起こすのでは?

っていう考えをサポートする結果になってるのが個人的に印象的でしたね。もちろん、「血液中の免疫反応が肺の免疫反応と一致しない」って点もそうですけども。

まあこの結果はより大規模な研究で確認する必要があるし、もっと軽症の人ではどうなのかはわからんわけですけど、この予備的な結果を見る限り、慢性的な息切れは時間の経過とともに改善する可能性が高そうだし、免疫系、炎症を抑制する治療によって回復を促進できるかもってのはグッドニュースなんじゃないかと。

あと、この研究の対象者はワクチン接種前にCovid-19に感染してたって点にも注意が必要っすね。

ではまた!

Tomohiro Okugawa

科学的知見を自分の体で試して、日常生活に活用していく人。知識の収集が趣味で一般向けにその共有をしたいと思って執筆中。京都大学環境衛生学等。

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