イベルメクチンで重症化を防ぐことができるのか調べてみたぞ!というRCTの話

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「イベルメクチンで症状の悪化を防ぐことができるか調べたよー」ってRCT(R)が出ておりました。イベルメクチンはmolnupiravirやnirmatrelvir/tironavirに比べて安価で入手しやすい薬として世界中で急速に普及した一方、複数の研究で「イベルメクチンを投与しても意味ないんじゃない?」って報告もあって、正直効果があるのかよくわからないんですよね。

そこで、「Covid-19の治療にイベルメクチンを含めるべきか?」という問題を検討すべく、マレーシアの高リスク群を対象に行われた最近の研究をチェックしてみましょう。これは過去の研究よりもデザインがしっかりしてまして、現時点で最も信用できるデータの一つなんじゃないかと。

どんな研究だったかといいますと、

  1. 対象者はRT-PCRまたは抗原テストで陽性だった50歳以上の男女で、症状発現後7日以内に軽度から中等度の症状を示していた490人。(無症状者、妊娠・授乳中、登録7日前までにイベルメクチンや抗ウイルス薬を服用された人は除外)
  2. 参加者のうち半数には、標準治療のほか体重1 kgあたり0.4 mgのイベルメクチンを5日間服用してもらう。残りの半数には標準治療のみ実施する
  3. 両グループの重症化リスク、ICU入院率、死亡率、副作用を比較する

みたいになってます。参加者の平均年齢は62.5歳、女性が54.5%、51.8%が2回のワクチン接種を完了していたらしい。

実験期間は2021年5月31日~10月25日までで、重症度のカテゴリーわけは以下のような感じです。

ステージ1:無症状
ステージ2:肺炎の証拠があり、有症状
ステージ3:肺炎の証拠があるが、組織の酸素は低下していない
ステージ4:体組織の酸素が少なく、酸素療法が必要な状態
ステージ5:多臓器にわたる重篤な状態

この研究ではステージ2と3を軽症と中等症、ステージ4と5を重症に分類しておりまして、WHOスケールに直せば、それぞれ2~4と5~9に当たる感じっすね。

そこで、どんな違いが出たかといいますと、

  • イベルメクチンを投与された患者さんのうち21.6%が重症化し、対照群では17.3%が重症化した(RR, 1.25; 95% CI, 0.87-1.80)
  • そのほか、以下の示すすべてのアウトカムでイベルメクチン群と対照群で有意な差はなかった。
    • 重症化した人のうちの症状の悪化スピード
    • 人工呼吸器の導入率
    • ICU入院率
    • 28日間の院内死亡率
    • 5日後の症状改善率
    • 胸部X線検査における肺炎の所見
  • サブグループアナリシスでは、ワクチン接種を完了した患者さんのうち、イベルメクチン群の17.7%、コントロール群の9.2%が重症化した(RR, 1.92; 95% CI, 0.99-3.7)

だったそうで、研究チームは「軽度から中等度のCovid-19の高リスク患者において、初期にイベルメクチンを投与しても重症化することを防げなかった」と結論付けております。

過去のRCTやメタ分析でもイベルメクチンに重症化リスク、死亡リスク低減の効果はない!ってことは複数示されてましたけど、イベルメクチン否定派に一つ証拠が加わった形ですね。

研究チーム曰く、

幸いなことに、現在、私たちはCovid-19に対抗できる他の治療法やワクチンという武器を有している。

とのこと。もちろんこの研究結果をその他の年齢層や投与時期、変異に適用できるかは謎ですけど、少なくとも以前に騒がれてたような「ミラクルドラッグ」的な効果はないんだろうなーと改めて感じた次第です。

Tomohiro Okugawa

科学的知見を自分の体で試して、日常生活に活用していく人。知識の収集が趣味で一般向けにその共有をしたいと思って執筆中。京都大学環境衛生学等。

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