パンデミック前後でSNSの使い方にどんな違いが生じたの?それって幸福度にどう影響してるの?って研究

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「パンデミックの前後で若者のソーシャルメディアの利用の仕方にどんな違いが生じたの?それってウェルビーイングにどう影響したの?」みたいな研究(R)が出ておりました。

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この手の話をすると、「学校閉鎖とかしてたんだからオンラインに接続する時間は増えていたに決まってる!」「そしてもちろんSNSなんて悪だ!メンタルによくないに決まっている!」といった主張を思いつくかもしれません。

が、SNSがメンタルにいいのか悪いのか?ってのは意外と難しい問題で、科学的には決着がついていないところなんですよね。というのも、

  • ソーシャルメディアを長時間使っている学生ほど、人とのつながり、社会的サポート、自尊心を強く感じ、うつ傾向も少ない

っていう報告があったかと思えば、

  • ネット上では匿名でルールを軽視しやすくなるせいで誹謗中傷を行いやすくなったり、「友達と深い人間関係を築けない…」って感覚になったりっていう問題のせいで、うつや不安の症状を抱えやすくなる
  • また、スクリーンタイムの長さが睡眠時間や睡眠の質を下げ、結果としてメンタルに悪影響を与える

ってことも確認されてるんですよ。さらに若者ほどこれらの両面の影響を受けやすくて、「結局SNSって悪なの?善なの?」って問題は安易に結論付けられないわけですね。

そんな中で今回の研究では「ヒトとの対面での接触が絶たれた状況の中でソーシャルメディアの利用がウェルビーイングにどう影響を及ぼしたのか?」ってことを調べたわけで、結構重要な内容といえるんじゃないかと。

これがどんな研究かといいますと、

  1. 2019年秋(パンデミック前)に、家庭の社会経済的地位や都会レベルがばらばらな子供1,007人を集めて、ソーシャルテクノロジーの利用状況とウェルビーイングを調べる
  2. 対面とオンラインのハイブリッド型で授業が行われていた2020年10~12月に改めて同様の調査を行う
  3. 2つの調査のうちいずれにも参加した子供(586人)のソーシャルテクノロジー利用状況とウェルビーイングの変化にどんな関係があるのかをチェック

って感じで、たった2回ではあるものの、同じ子供を対象に調査を行えている点がこの研究に強みといえますね。

ちなみに、「ソーシャルテクノロジーの利用状況」に関しては、以下の変数が調べられたそう。

  • ソーシャルメディアを一日何回チェックするか
  • 就寝前にどのくらいSNSを使っているか
  • 親に隠れてSNSを使う頻度がどのくらいあるか
  • インターネットの問題利用(「インターネットが使えないとどのくらいモチベーションが下がるか?」といった質問でチェック)
  • オンラインハラスメント
  • どんな目的でソーシャルメディアを利用しているか(学習、人間関係等)
  • 気分が落ち込んだ時に力になってくれるサイトがあるか?

一方、ウェルビーイングに関しては、以下のような要素がチェックされたそう。

  • ストレスを感じた時に対処する対策を持っているか?
  • オンラインの社会不安(「SNSで自分がどういわれているか気になる」的な)
  • 社会不安
  • 孤独感
  • うつ症状

そんで、性別、年齢、親の教育レベル、人種等も考慮して分析した結果、面白いことがわかりまして、

  • 予想通り、パンデミック期間中には子供たちがソーシャルメディアをチェックする頻度は増えていた。同様に、就寝前のソーシャルテクノロジーの利用、インターネット上の問題行動も増えていた
  • また、全体的にパンデミック期間中には社会不安、孤独感、うつ症状も有意に増加していた。同時に、子供たちが持つストレス対策の戦略も増えていた
  • しかし、ソーシャルメディア利用状況とウェルビーイングの変化の間には統計的に意味のある関係性は見いだせなかった

だったそうです。どうやらパンデミックでティーンの社会不安、孤独、うつがより一般的になったのは事実だけど、それはソーシャルテクノロジーの利用が増えたことが原因だという証拠は得られなかったみたい(不安等が増えた人が、必ずしもSNSを使いすぎてる人だとは限らなかったということ)。

要するに、ヒトとの接触が制限されてる期間にはいろんなところからストレスを受けるせいでメンタルにダメージを負いやすいんだけど、同時にストレス対策のスキルを身に着けることでメンタルを守るガードも硬くなっていったんじゃないか、と。これは脳がまだ形成過程にある10代の若者に特有の現象かもしれないですな。

また、年齢や性別、オンラインへのアクセス環境、家庭でのルール(「スマホは2時間まで」みたいな)、Covid-19関連の不安等の要素を考慮しても、この「ウェルビーイングとソーシャルテクノロジー」の関係性は維持されたらしい。

研究チーム曰く、

ソーシャルメディアがウェルビーイングに悪影響を及ぼす可能性があると考えるのは間違いではない。しかし、ソーシャルテクノロジーはパンデミック時であろうとなかろうと、若者の幸福度を向上する役割を絶対に果たすことができる。この技術は「現実には」得られないコミュニティの感覚を提供することができるのだ。

とのことで、SNSの利用とメンタルへの影響の間にはいろんな交絡因子があって、毒にも薬にもなるんだよーって事っすね。

まとめると、

  • ソーシャルメディアの利用は必ずしも精神衛生上悪いとかいいとか言えるものではなく、メンタルへの影響は多くの要因に左右されるものであり、使用頻度や使用時間だけで予測できるものではない!

といったところでしょうかね。「オンライン授業だからってまたスマホいじって!」とか言いたくなっても、実はそれがメンタルにはいい方向に作用している可能性もあるってことでことっすね。もちろんだからといって無制限にSNSに入り浸ってもOK!って話にはならないのは当然ですが。

Tomohiro Okugawa

科学的知見を自分の体で試して、日常生活に活用していく人。知識の収集が趣味で一般向けにその共有をしたいと思って執筆中。京都大学環境衛生学等。

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