パンデミック中の睡眠習慣がどう変わったのかを49か国、50万人分のデータから調べてみたぞ!のメタ分析

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「パンデミック中にみんながどのくらい睡眠障害を抱えていたかを調べてみたぞ!」ってところを調べたメタ解析(R)が出ておりました。

このテーマで調べたメタ解析や系統的レビューは過去にもいくつかあったんですけど、これまでは対象者を限定したり(「子供だけ」とか「Covid-19感染者だけ」とか)、ロックダウンの有無を考慮してなかったりって問題があったんですよ。その点、今回の研究ではより多様な変数を考慮した過去最大規模の分析がなされてまして、このトピックにおける知識のギャップを埋めるのに参考になりました。

これはワシントン大学などの研究で、2020年3月以降に出版された250件の研究をピックアップしたメタ分析となっておりまして、「Covid-19パンデミック中の睡眠障害の状況」を調べております。具体的には、

  • 合計参加者は493,475人で、平均サンプルサイズは1804人だった。また、参加者の64%が女性で、平均年齢は35歳だった
  • 49か国の参加者が含まれており、そのうちのトップ3か国は中国(33.60%)、イタリア(13.60%)、インド(6.40%)だった
  • 研究デザインは91%が横断研究で、5%が縦断研究、4%が症例対照研究だった
  • 全ての研究は2020年3月以降にパブリッシュされており、37%が2021年に発表されていた。162件のデータ(64.8%)がロックダウン時のデータを取り扱っていた
  • 睡眠障害の評価には、38%の研究でPSQI、37.60%の研究でISI、4.80%の研究でAISって指標が使われていた
  • 95%で研究の質が「まあまあ」または「高い」と評価されている

みたいになります。多様かつ大量のサンプルデータを用いて、Covid-19パンデミック期間中にどのくらいの人が睡眠障害に悩まされてたの?ってとこを深堀してくれたわけですね。

でもって、結果はこんな感じになりました。

  • 全体の40.49 %の人が睡眠障害を抱えていた(I2= 99.7% )。この結果は、Bayesian メタ解析の手法を使った場合でも同様で、年齢や性別はこの割合に影響を及ぼしていなかった
  • サブグループ解析で6つの主要な集団を確認した結果、特に睡眠障害を抱えやすい集団が判明した。
    • Covid-19感染者(52.39%)
    • 子供や青年(45.96%)
    • ヘルスケアワーカー(42.47%)
    • 特別なヘルスケアを必要とする人(41.50%)
    • 大学生(41.16%)
    • 一般集団(36.73%)
  • モデレーター解析によれば、年齢が高いヘルスケアワーカーや女子大学生(vs 男子大学生)ほど睡眠障害を抱えやすかった(それぞれP=0.03, 0.04)。ヘルスケアワーカーのうち、フロントラインで働いているかどうかは関係なかった(P=0.78~0.98)
  • ロックダウンしているときの方が、ロックダウンしていないときに比べて睡眠障害の割合が多かった(42.49% vs 37.97%)。ただし、両者に有意な差はなかった
  • 2020年に出版されたデータに比べて、2021年に出版されたデータの方が睡眠障害の割合が多かった(36.20% vs 47.14%)
  • 国別にみると、中国やインドの30%からスペインの60%まで、大きなばらつきが見られた

ということで、世界的にみても約10人に4人くらいは入眠や睡眠の維持に問題を抱えていて、特にCovid-19感染者と子供でそのリスクが大きかったわけですね。パンデミック前のメタ分析(R)では、睡眠障害を抱えていた子供の割合は25%ほどってデータがありまして、それが46%(ほぼ2倍!)まで跳ね上がってたってのは憂慮すべき統計でしょうな。

また、2021年に報告された睡眠障害の頻度の方が2020年よりも高かったってことから、Covid-19が睡眠に継続的に悪影響を及ぼしていることが伺えますね。

ただ、この研究では異質性が非常に高いし(仕方ないところではありますが)、運動習慣、喫煙、精神疾患等の変数が調整されておりません。特にメンタルの状態が睡眠に影響を及ぼすってのは多くの研究で報告されているところなんで、この辺りは今後の研究にも注目って感じっすね。

また、「そもそもなんでパンデミックで睡眠に問題が増えたの?」って話については、以下のような知見が参考になります。

  • パンデミックに入ると全体的な就寝や起床時間が遅くなった(R
  • 不安、外で運動できないこと、リモートラーニング、対人コミュニケーションの時間の減少のすべてがデバイスを触る時間の増加につながっていて、それは特に就寝直前の時間に確認できる(R
  • 日光に当たる時間の不足、スマホやパソコンからのブルーライトがサーカディアンリズムの乱れを誘発する(R
  • 社会的な孤立や孤独感がメンタルおよび睡眠の質に影響を及ぼす(RR

逆に、ここら辺を日ごろから意識しておくと良好な睡眠生活を送ることができるはずですんで、頭の片隅に置いておいていただくといいんじゃないかと。また、エビデンスベースの睡眠改善のための戦略としては、CBT、瞑想、スポーツ介入、ウェルネス介入等が挙げられますので、既に睡眠に不満を感じている方はこの辺りの知見をチェックしていただくのがいいんじゃないかと。

研究チーム曰く、

私たちは、睡眠問題が回復するのか、安定するのか、それとも悪化するのか、データを分析していくつもりだ。多くの場合、睡眠を妨げる問題が取り払わても睡眠障害は慢性化するケースが多い。

とのこと。徐々に規制が解除されていけば、同時に睡眠の問題も改善していく、といった具合にうまくいくとは限らないかもねー、と。たしかに今回のパンデミックは働き方等にも継続的に続く大きなインパクトを与えたんで、流れに身を任せているだけじゃダメかもなーって気はしますね。個人的には、今後も引き続きouraリングでフィードバックをもらいつつ、意識的に日光を浴びたり、食事や運動なんかも気を付けておこうと実感した次第です。

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Tomohiro Okugawa

科学的知見を自分の体で試して、日常生活に活用していく人。知識の収集が趣味で一般向けにその共有をしたいと思って執筆中。京都大学環境衛生学等。

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