タバコはCovid-19の死亡リスクを高める!じゃあ今は禁煙していれば大丈夫なのか?のメタ分析

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「喫煙はCovid-19死とどのくらい関係してるか?」を調べたメタ分析(R)が出ておりました。

Covid-19患者の重症度や死亡率に関係するファクターは複数指摘されてますが、喫煙習慣はよく調べられてる要素の一つ。ニコチンや煙に含まれる化学物質が肺機能や体の防御機能を低下させるせいでCovid-19の転帰を悪化させるって話っすね。より専門的には、ニコチンがIRF7をダウンレギュレートしたり、抗ウイルス反応を低下させたりといったことが知られております(R)。

たしかに、ここら辺のテーマについてはメタ分析やシステマティックレビューもいくつか発表されてるんですけど、「一回もタバコを吸ったことがない人」と「前は吸ってたけど今はやめてる」って人を区別していないものが多いって問題があったんですよ。SARS-CoV-2の受容体であるACE2の発現過剰が禁煙後どのくらい経てば喫煙経験のない人と同程度になるのかってのがはっきりわからんにもかかわらず、元喫煙者を完全に「非喫煙者」に分類してしまうと喫煙がCovid-19症状に及ぼす影響を過小評価してしまうことにつながりかねないってことですな。

てなわけで、この研究では条件を満たした研究から2020年1月から2021年1月に発表された34の論文をピックアップして、まず合計35,193人のCovid-19患者を以下の3つに分類しております。

  • 現在タバコを吸っている人
  • 以前タバコを吸っていた人
  • タバコを吸ったことがない人

そのうえで現在および過去の喫煙がCovid-19の死亡率にどう影響するのかを調べたんだそうな。過去の同テーマのメタ分析より多くの研究が含まれてるのもグレートですね。

さらに、分析では国の所得レベルも検討されておりました。国の所得によって喫煙者の割合や平均年齢、医療の質やアクセスの容易性も変わってきますから、そこらへんもしっかり考慮してくれたわけっすね。

その結果、34の研究のうち30件が高所得国、4件が高中所得国のデータで、全体の患者の平均年齢は63.5歳だったそう。具体的なところを見ていくとこんな感じです。

  • 現在の喫煙習慣でCovid-19死亡リスクはどう変わるか?(vs. 過去にも現在にも喫煙習慣のない人)

    • 一度も喫煙経験がないCovid-19患者に比べて、現在タバコを吸っているCovid-19感染者は死亡のオッズが26%高かった(OR 1.26, 95% CI: 1.01-1.58, p=0.043; I2=62.2%, p<0.001)

    • 年齢、性別、人種、他の疾患の有無等を調整しても、Covid-19死亡リスクに関して結果に有意な違いはなかった

    • 出版バイアスの証拠はなく(p=0.569)、メタ回帰分析によれば年齢による有意な差はなかった(p=0.901)

    • 現在の喫煙習慣とCovid-19死の関係は、高所得国に比べて非高所得国の方が有意に強かった(OR: 1.14 vs 3.105, p=0.015)。両グループに出版バイアスの証拠はなかった

    • 感度分析によれば、NOSスコアが6以下の4件の研究を除去しても結果はほとんど変わらなかった

  • 過去の喫煙習慣でCovid-19死亡リスクはどう変わるか?(vs. 過去にも現在にも喫煙習慣のない人)

    • 現喫煙者と同様に、元喫煙者は一度も喫煙経験がない人よりに比べてCovid-19の死亡リスクが高かった(OR 1.76, 95% CI: 1.53-2.03, p<0.001; I2=68.1%, p<0.00)

    • 年齢、性別、人種、他の疾患の有無等を調整すると、Covid-19の死亡リスクが有意に低くなった(調整前:OR 2.69, 95% CI 1.80-4.03, p<0.001、調整後:OR 1.44, 95% CI 1.03-2.00, p=0.031)

    • メタ回帰によれば、元喫煙者のうち年齢が高いCovid-19患者の方がCovid-19の死亡率が高かった

    • 過去の喫煙経験とCovid-19死亡リスクは高所得国では有意に関係していたが(OR 1.72, 95% CI: 1.52-1.95, p<0.001; I2=59.4%, p<0.001)、非高所得国では有意な関係は見られなかった(OR 1.92, 95% CI: 0.52-7.10, p=0.330; I2=86.6%, p<0.00)。両グループに出版バイアスの証拠はなかった

    • 感度分析によれば、NOSスコアが6以下の4件の研究を除去しても結果はほとんど変わらなかった

ということで、現在タバコを吸っている人だけでなく、過去にタバコを吸っていた人でもCovid-19の死亡リスクが高くなっていたって感じですね。年齢による死亡リスクの影響について両者で違いが出た理由は謎ですが、研究チームは「過去にタバコを吸っていた人のうちの多くはもう禁煙してから相当時間がたってるのが関係しているんじゃないの?」と考えていまして、確かにありそうですわな。となるとやはり禁煙期間のデータを収集できていなかったのが何とも残念と感じるわけですが。

また、国の所得レベルによって結果が異なってた点に関しては、

  • 高所得国の方が禁煙を始める年齢が若く(アメリカでは平均39.5歳、中国では48.7歳ってデータもあるらしい)、喫煙者の平均年齢も若いこと
  • 高所得国では現喫煙者が元喫煙者にとってかわられてる中、非高所得国では新規喫煙者が増加傾向にあること

なんかが想定されてました。たばこ産業が先進国での販売を撤退して途上国に手を伸ばし始めているってのが関係してるんじゃないか、と。

まあ先述した禁煙期間のほか、喫煙期間やタバコの種類等も考慮されておりませんのではっきりしないところも多いですけど、タバコの煙の非ニコチン成分には数多くの呼吸器系の毒物及び刺激物が含まれてて、Covid-19の死亡リスクをブーストする可能性は十分あります(R)。なので、タバコの種類を変えるとかよりも、喫煙の開始を予防しできる限り早く禁煙するのが最善なんじゃないかと。

一部では、「喫煙とCovid-19の重症化は無関係!」なんて主張はありますが、これは喫煙者とそれに便乗したタバコ産業による誤情報であるって報告もあります。今回の研究はパンデミック開始から1年以内のデータを基にしてるってこともあって、今後の研究にも引き続き注目していくことは必須でしょうが、現時点での結論は結構はっきりしてるんじゃないかと思いましたねー。

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Tomohiro Okugawa

科学的知見を自分の体で試して、日常生活に活用していく人。知識の収集が趣味で一般向けにその共有をしたいと思って執筆中。京都大学環境衛生学等。

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