ワクチンを接種するかどうかの意思決定に重要な要素って一体何なんでしょうねーのメタ分析

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「ワクチン接種率を上げるにはどうしたらいいんだろう…」ってのは世界中の悩ましき問題。先日も「手軽かつ強力だと思われてたあの戦略はもう効きそうにないかもよ!」みたいな研究を紹介しましたね。

そんなところで新しいメタ分析(R)では、「世界の大学生のどのくらいの割合の人がワクチン接種にためらいを感じてるの?」「その行動の決定因子って一体何なの?」みたいなところを調べてくれておりました。

大学生は重症化や死亡のリスクこそ低いものの、キャンパス内、キャンパス間、大学間、その他の活動で多くの人と触れ合う機会が多いおかげで感染リスクが高くなり、さらにマスクを着用する割合も比較的少ないため、自身も気づかぬうちにパンデミックの「スプレッダー」になっているケースが多かったりするわけです。なんで、大学生の心理を理解しておくことは社会全体にとって有益なことといえるでしょう。

この研究がどんな内容だったかといいますと、

  • 2021年12月31日までに発表された34件の研究をピックアップ
  • 18歳以上の大学生、大学院生のデータをまとめて、どのくらいの人が『Covid-19ワクチンを打ってもいい』『ぜひ打ちたい』と考えているのかを調べる
  • さらにその意思決定に重要な影響を与えているファクターをチェック
  • 分析には42か国の対象者42,543人が含まれ、9件が米国、5件が中国、3件がイタリアのものだった

みたいになります。ワクチン接種に対する考え方は、国籍、年齢、リスクに対するとらえ方、性別、教育レベル、過去の感染歴といった様々な文脈の要素と関連していることが確認されてますけども、そのうちどれが大きな決定因子として働いているのか?っていうわけですな。NOSスコアは4点~8点で全体的にエビデンスの質はそれなりによさげで、多少の出版バイアスの心配はあるものの、おおむね参考になるでしょう。

そんなわけで、結果はこんな感じになってました。

  • 全体的にワクチン接種を受け入れている大学生の割合は69%だった。
  • この結果は国によって大きなばらつきが見られたが、概してアジアの学生の方がワクチンに対して前向きな姿勢を示していた。具体的には、米国で66%、中国で77%、インドネシアで95%、イタリアで85%といった感じだった(イタリアの大学生のワクチン受け入れ率の高さは、感染者数の急増と大学における早急な対策等が影響していたものと考えられる)
  • 2020年に行われた研究においてワクチン接種を受け入れている大学生の割合は72%であったのに対して、2021年に行われた研究では70%だった
  • 学部別でみると、非医学生に比べて医学生(特に医学部生)は積極的にワクチンを接種したいと考えていた(が、その差は小さい)

ということで、Covid-19ワクチンに対する考え方は国によってばらつきがあるものの、パンデミックのフェーズや大学の専攻によらず大体同じような傾向を示していたみたい。

さらに、「何がワクチンに対する躊躇や受容を形成しているのか?」って点については以下のようなことが示されておりました。

  • 年齢、性別、グレードは学生のワクチン接種の意向に影響を与えていなかった
  • 過去にCovid-19に感染した経験のある学生はワクチンを接種しようと考える傾向が弱かった(OR=0.49)。しかし、家族や友達の感染歴は自身のワクチン接種の意向に影響していなかった
  • Covid-19感染に心配を感じていること、Covid-19に対して十分な知識を有しているという感覚、Covid-19の重大性を感じていること、皆のワクチン接種の強制に賛成していることはワクチン接種率の向上と関連していた(それぞれOR=1.41, 1.22, 1.24, 2.33)。一方ワクチンの副作用を心配している場合にはワクチン接種可能性が低くなっていた(OR=0.57)
  • 面白いことに、感染リスクの高さや過去5年以内のワクチン接種歴はCovid-19ワクチン接種行動と関連が見られなかった
  • メタ分析からは除外された知見として、以下のようなことも確認された

    • 友達や家族と距離を置かなければならなくなってしまう、自分が感染源になってしまうかもしれないという心配はワクチン接種の受け入れを促進していた

    • 情報ソースもCovid-19ワクチン接種に対する意思決定に影響しており、マスメディアや製薬会社等で科学者がエビデンスベースでワクチン接種をすすめていた場合には学生のワクチン接種率も向上していた。が、主な情報源がSNSだった場合には逆にワクチン接種を足踏みさせていた

    • また、単純に「ワクチン接種は手軽にできるよ!」とアクセスの良さを訴えた場合にもワクチン接種を前向きに考えさせるようになった

    • ワクチンに対する客観的な知識のみならず、権威や専門家、政府、公衆衛生局に対する信頼感もワクチン接種の意思決定に影響していた

だったそうです。ワクチン接種にためらいを感じていることが直接的にワクチンを受けない!って行動につながっているわけでもなくて、感情的、文化的、社会的、精神的、政治的ないろいろな要素が作用しあって最終的にワクチンを受けるか?という決定につながるみたい。

研究チーム曰く、

大学生は聡明で、エネルギーやクリエイティビティにあふれ、情報へのアクセスが早く、概念や価値観の形成段階にあるが、感情的で自制を恐れる傾向もある。そのため、もし彼らが感染の結末を知り、ワクチン接種の重要性を認識すれば、彼らはそれを受け入れ、行動を起こすことができるだろう。

とのこと。この年頃の若者たちは良くも悪くも新しい情報や知識で自分の考え方をアップデートできるんだぞー、と。

まあ政府に対する信頼感とかをどうにかするのは難しいですけど、信頼できるソースから情報を仕入れ、自分の行動の重要性を認識し、自分の行動や自分が決めるんだ!っていう自己効力感を持つのが大事、ってことで。

Attitudes of COVID-19 vaccination among college students: a systematic review and meta-analysis of willingness, associated determinants, and reasons for hesitancy

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Tomohiro Okugawa

科学的知見を自分の体で試して、日常生活に活用していく人。知識の収集が趣味で一般向けにその共有をしたいと思って執筆中。京都大学環境衛生学等。

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