【研究結果】パンデミック前/最中の睡眠パターンが精神衛生上の問題と関連する

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「パンデミック前後の睡眠パターンとメンタルの問題に関連はあるのか?」ってあたりを調べたデータ(R)が出ておりました。

パンデミックが睡眠やメンタルに及ぼした影響を個別に調べた研究は多くありまして、

  • アメリカの成人のうち、2019年に比べて2020年の夏にはうつや不安の症状を抱える人が2~4倍にも増えていた(R, R, R

といったことが報告されております。

そしてご存じの通り、睡眠のトラブルとメンタルの不調に関連があることはパンデミック前からよく知られておりまして、有名どころだと、

  • 27万人のアメリカの成人を対象にした研究(R)では、平均の睡眠時間が6時間以下の人がそれ以上の人の比べて心理的苦痛を抱える頻度のオッズが2.5倍!

ってなことが確認されてたりするんですよね。ほかにも睡眠の質、週末と平日の睡眠パターンの違い、不眠なんかがうつや不安といったメンタルのトラブルと併発するってデータは多くて、メンタルを良好に保つためにも睡眠習慣はぜひ整えておきたいわけです。

そんなところで、このブリガム&ウィメンズ病院などの研究では、パンデミック前を含む複数の時点における4,912人分(平均年齢は39.7歳)の睡眠データを分析。睡眠のデータはWHOOPっていうウェアラブル・ヘルス・トラッカーを利用していて、変数には睡眠時間、就寝時間、起床時間、睡眠パターンの一致性、睡眠効率なんかが含まれております。サンプル数も比較的多いし、客観的な指標を使った縦断研究であるうえ、睡眠の変数も複数分析に含まれてるのはありがたいですねぇ(ただ、回答率が14.9%と低いこと、参加者の71%が男性であることとかを考えると一般化可能性はちょっと低めかもという心配があるのも事実ですが)。

で、人口統計学的な指標や活動量、アルコール消費量といったライフスタイル面での要素も調整したところ、結果はこんな感じになりました。

  • パンデミック開始直後には、睡眠時間が15.2分長くなり、数か月後にはパンデミック前より5.5分ほど長く睡眠をとっていた
  • 睡眠パターンの一致性(休日と平日の睡眠の一貫性)のスコアは、パンデミック初期には3.51ポイント上昇し(100点満点中)、数か月後にはパンデミック前に比べて4.06ポイント上昇していた
  • 就寝時間は18.7分遅くなり、起床時間は36. 6分遅くなっていた。そしてパンデミックのフェーズが遷移するにつれ、起床時間は少し早くなったものの、就寝時間は遅くなったままだった

ということで、もちろん中には逆のパターンを経験した人も多かったものの、全体的にはパンデミックが始まると睡眠のタイミングが後ろに倒れる人が多かったみたい。これはその数字も含めて先行研究とおおむね一致してますな。

さらに、メンタルや物質使用障害との関連では、以下のようなことがわかりました。

  • 全回答者のうち、19.6%がうつまたは不安症、32.4%がバーンアウトシンドローム、22.4%が物質使用障害の発症または症状の悪化を報告した
  • パンデミック前およびパンデミック最中の睡眠時間が6時間未満だった人は7時間以上眠っていた人に比べて2020年6月時点においてメンタルに問題を抱えている確率が高かった(不安・うつ症状:aOR=1.75、燃え尽き症候群:aOR=1.57)。また、パンデミック前に6~7時間眠っていた人がパンデミック期間中、6時間未満の睡眠時間になった場合には、燃え尽き症候群になるオッズがさらに高くなっていた(aOR=2.22)
  • パンデミック前および最中における睡眠パターンの一致性が低いほど、物質使用障害の発症または悪化等のオッズが高かった。また、パンデミック前よりも一致性が低下した場合にも、物質使用障害、不安・うつ症状を抱えるリスクが高くなっていた
  • しかし、パンデミック前の睡眠時間、睡眠パターンの一致性が高かった場合には(>7h, >80)、パンデミック突入後に睡眠時間が減ったり、睡眠パターンにばらつきが出てもメンタルに不調を抱えるリスクは高くなっていなかった

だったそうで、パンデミックの最中だけでなく、パンデミックがスタートする前の睡眠パターンも精神衛生上の問題と関連していたみたい。

研究チーム曰く、

精神衛生上の影響を緩和するための睡眠とサーカディアンリズムがもつ潜在的な役割をよく考慮すべきである。ウェアラブルデバイスを使用している米国の成人を対象としたこの研究の結果は、ストレスフルなライフイベント下での有害なメンタルヘルスに対する修正可能なリスク因子として、睡眠時間および睡眠タイミングの一貫性があげられることを支持するものである。

とのこと。特にストレスの多い状況下でメンタルを健康に保つためには睡眠が重要なキーの一つだぞ!と。まあこの結果だけだとメンタルが睡眠に影響しているのか、睡眠がメンタルに影響しているのか、またはその両方なのかっていう因果関係は分からないわけですけど、今の睡眠のトラブルが数か月たってからメンタルの不調を誘発する可能性があるぞ!ってのは気を付けておきたいところですねぇ。

Prior sleep-wake behaviors are associated with mental health outcomes during the COVID-19 pandemic among adult users of a wearable device in the United States

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Tomohiro Okugawa

科学的知見を自分の体で試して、日常生活に活用していく人。知識の収集が趣味で一般向けにその共有をしたいと思って執筆中。京都大学環境衛生学等。

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